• HELMZ THE REASONS OF BEING HERE NOW
  • トライアスリートとしての学生時代を送った後、ブリヂストンサイクルに入社。競技用ではない一般自転車のプロデュースを行う中で、nari/furiの服に出会ったことで、自転車の新たな方向性を見いだし、HELMZプロジェクトを立ち上げる。
  • ニューヨークで数々の経験を送り帰国した後、2007年に「Fashion + Bicycle」がテーマのファッションブランド《nari/furi》を立ち上げる。『自転車にきちんと乗れる、品の良い普段着』を目指す服造りは、多くの自転車好きに好評を得ている。
 

BRIDGESTONE × nari/furi HELMZが生まれた理由とその存在意義

瀬戸 HELMZプロジェクトは、ボクが個人的にnari/furiさんの服が気になって、展示会へ訪れたことから始まりました。小林さんと話をするうちに、自転車マニアとは違った視点から、自転車への意見が出てきたんです。

小林 『カッコいい自転車とはなんぞや』、という話になったんですよ。

瀬戸 そのころのボクは、いままでボクらの周りにはいなかったタイプの人々が、自転車に乗り始めたのを感じていました。彼らはライフスタイルの一部として、ピストバイクを中心として自転車に乗っているわけです。

小林 ボク自身も当時はピストに乗っていました。周囲の友人から自転車が欲しい、という相談を受けましたが、彼らは、軽さや速さやパーツのグレードといったスポーツバイクを選ぶ視点では、自転車を選ばないんですよ。見た目の良さだったり、カラーリングだったり、それこそピカピカに磨かれたリムであったりね。

瀬戸 スポーツバイクやママチャリといった、これまでの常識としての自転車であればブリヂストンサイクルは得意なんですが、じゃあ、そういった視点からも選ばれる自転車、となると、それを造るのに必要な感性にかけている部分があったのも事実。

小林 回りの声を要約するとこんな感じです。カッコいいピストが欲しい。でもピストは自転車としてはハードコアすぎる。ロードバイクは本格的すぎていらない。クロスバイクは見た目がアレなので(笑)見向きもしない。となると薦められる自転車がない。こんなに求められているのに、なんでないんですか、って思うわけです。

瀬戸 だからこそ日本の老舗自転車ブランドとして、ファッションやライフスタイルの一部となれる自転車を提案し、自転車そのものの価値を上げる必要があると思いました。そこにまさに渡りに船、という具合にnari/furi さんが現れた。ということで、『カッコいい自転車ってなんでしょうね』になったんですが。

小林 カッコいい/悪いというのは人それぞれの主観です。でも、そんな中でも、みんなが納得する「ここがこうだとカッコいいよね」という点はあるはずだと。じゃあ、それはなんだろう、と話すうちに、その一つとして、太くて薄くて速そうな、TT バイクのようなものが浮びました。「強そう」「攻めてる」みたいなイメージの。

瀬戸 「 悪そう」「アウトロー」みたいなイメージも出ましたね。なにものにも屈しない、パンクな姿勢というか。

nari/furiの感性、ブリヂストンの機能とが両立

小林 そんなこんなで話が進んで、まずはブリヂストンさんから、最初のたたき台としてラフスケッチが上がってきた。でもそれは理想のイメージとは離れていたんです。

瀬戸 これまでの自転車設計をベースに、言葉のイメージに近づけた、というたたき台だった。現実にこういうパイプを調達して、それを組み立ててというのが前提の。でも、そうじゃない、ということで小林さんに自身のイメージをスケッチ化してもらいました。

小林 ボクが出したイメージを、ブリヂストンの厳格な安全規格、走行性能に見合う形にするまでには相当、開発陣の皆さんに苦労してもらいました。

瀬戸 フロントギアはシングルで、タイヤを太く、しかもエアロフォルムでタイヤとの隙間は最小に、というのが譲れないところで。でもこういった要素と性能とのバランスを取るフレーム開発はとても厄介な課題でした。

小林 パーツ一つのセレクトにいたるまで、でしたね。例えば、最初のモデルの発表直前まで、ホイールが決まらなかった。ボクが高さがのあるハイポリッシュのリムでないとダメ、と粘ったら「 性能と外観が基準に達しないから無理」となって。そこをなんとかできませんか、というやり取りが最後の最後まで続いて。

瀬戸 走る、曲がる、止まるといった、自転車としての基本性能は、社内の経験と規定の中で突き詰めてはいます。でもそれを、高級なパーツで表現するこれまでの方法ではなく、フレームからパーツまで全ての収まりというか、スタイルといいますか、それで表現すべきなのではないかと。

小林 一事が万事、 これは行けるか、ダメだ、じゃあこれならどうだ、みたいなやり取りでした。じゃないと「高級パーツを使う自転車の勝ち」になってしまう。でも、そうじゃない。街で乗る自転車にこそ必要なことは他にある。瀬戸さんはブリヂストンにはないものを造りたかった。ボクはブリヂストンでしかできないものを造りたかった。ブリヂストンの機能とnari/furiの感性とが両立した自転車。それを形にしたかったんです。

身だしなみの一部、となる自転車を

瀬戸 それが単に性能だけではない、 人に見られることも意識した、自転車に対する新しい評価基準、価値観ということです。「見た目」「ファッション」と言うと誤解を生みそうなので……、なんだろう、「身だしなみ」という言葉になりますかね。

小林 nari/furi が服で伝えている「洗練された街と自転車ライドとをつなぐ」というメッセージを自転車そのもので表したかった。「仕立てのいいコートを着る、丁寧な造りの靴を履く」ということの延長としての、見た目の良い自転車。身だしなみの一部としての自転車、ということになると思います。

瀬戸 そこから生まれたこの価値観を、HELMZ のファーストモデルとして世に問うたところ、共感してくれる人が多かった。であれば、この「身だしなみとしての自転車」というコンセプトを、ブルホーンバー+10 速という高級ライン《H1X》、より手に取りやすい価格帯の《H10》という2つの新ラインで、より広めたいと考えたんです。

小林 特に《H10》は、ブリヂストンでしかできないことの象徴なんですよ。この価格帯で、100%コンセプト通りのものを発売できるのは、ここしかない。まさに「時は21世紀、自転車の技術はこれ以上ないほど進歩している」。 これまでとは違う、全てはこれに集約されますね。